勝手に古今和歌集
「あの、さ………」







犬飼くんが改まった表情であたしに向き直る。





いきなり真剣な顔をされて、あたしは思わずどきりとした。







「---俺、このクラスになってから、ずっと夏木さんのこと好きだったんだけど。


付き合ってくれますか?」






「………う、あぅ、えーと、その話はおいおい………」







間の抜けた返事をして、あたしは脱兎のごとく校舎へと駆け出した。






「あっ、待ってよ夏木さん!!






追いかけてくる犬飼くんの足音を聞きながら、まあ悪くないかもしれない、なんてあたしは考えていた。






砂埃の舞うグランドの真ん中を突っ走るあたしと犬飼くんの上で、太陽がさんさんと輝いている。







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