勝手に古今和歌集
「今さ、最後の夢の話、聞いてた?」






と俺が訊ねると、夏木さんは「え? あ、うん」と頷いた。




よかった、やっぱりちゃんと聞いてたんだ。





だったら、



俺は、君の姿を夢に見るくらい、君のことが好きなんだ



……って言えば、きっと俺の想いの深さが伝わるだろう。





とは思ったものの。




「君が好き」という一言を口に出すことは、思った以上にハードルが高くて。







「昨日さあ……俺の夢に、夏木さん出てきたんだ」







俺がなんとか口に出せたのは、こんな中途半端な言葉だけだった。





なんの報告だよ………。





しかも、照れ笑いが勝手に湧きでてしまって。





なんとまぁ、情けない告白になってしまったことだよ。






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