勝手に古今和歌集
「ねぇねぇ、夏木さん」






先生が教室から出て行ったあと、前の席の犬飼くんがぱっと振り向いた。






「今さ、最後の夢の話、聞いてた?」





重たい前髪の下で、ぎょろりとした目玉があたしを見つめている。






「え? あ、うん」






あたしがこくりと頷くと、犬飼くんがにんまりと笑った。






「昨日さあ……俺の夢に、夏木さん出てきたんだ」















「…………は?」






あたしは絵に描いたようにぽかーんとした。






こいつ、急に何言い出した?








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