勝手に古今和歌集
怖いよ、だれか助けてーーー






わたしはぎゅっと目を瞑り、両手で顔を覆った。




尾びれをなるべく小さくして、身体を丸める。





あぁ、奇跡が起こって、この網が消えてしまえばいいのに………





そんな願いをお月様が叶えてくれるはずもなく、とうとう海面が見えてきた。





網がぐぐっと勢いよく引き揚げられる。





わたしはがんじがらめになったまま、ざばりと水面から顔を出した。





はるか遠くまで広がる真っ黒な海に、黄色がかった月の光が一筋の模様を作っている。





そして、わたしの目の前には、釣り舟がぷかぷか浮いていた。





その上には、大きな満月を背にした、黒い人影ーーー







「…………おっ?


なんだ、お前?」






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