勝手に古今和歌集
「ーーーおぉっ?」






わたしの全身が海の中から現れると、彼は目を見開いて小さく叫んだ。





月光を受けてきらめく青い鱗。




わたしの腰から下を覆っているそれを、言葉もなく凝視する彼。






「………お前、人魚か」






彼はぽかんと口を開いてわたしを見た。






ーーーあぁ、ばれてしまった。




もうだめ、わたしの人生は終わり。





さあ、切り身か見世物小屋か?






彼の考えを探るように覗き見ると、彼は






「すごいな、本当にいるんだな……」






と物珍しそうにわたしの頭の先から足の先までを眺めている。





あぁ、これはどうやら、見世物小屋に売られることになるらしい。






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