勝手に古今和歌集
覚悟を決めて、わたしは目を閉じた。




絡みつく網は、どうしたって解けそうにもない。




………これも運命。




諦めるしかないんだわ…………






すると。






「………ぶふっ」







不思議な音が聞こえて、わたしはそろそろと瞼を開いた。





目の前で彼が、大きな手で口許を覆っている。




その隙間から、くくく、と笑いが洩れた。






「…………?」






なぜ笑っているのだろう、わたしが首を傾げていると、彼は「ごめんごめん」と軽く手を挙げて謝ってきた。






「………いや、地曳き網にかかるなんて、間抜けな人魚もいたもんだなと」






< 80 / 93 >

この作品をシェア

pagetop