初春にて。
 一年ほど前にあった大学の同期会の席で、酔っ払っていたにしろ、彼らのあの言い方は私だって聞き捨てならなかった。でも彼は一切怒ることもなく、そうそう、とそれに乗っかる形で綺麗に笑いを取って場を収めていた。
「あの時、俺な、単なるヘタレやってん。みんなそれなりに社会人やっとって、ちょっと俺には分からへん話なんかで盛り上がったりして。それでなくとも、少し居心地が悪くて気まずく思っとったところに、啓太のアホがなんにも知りもせんくせに、俺とユズ見て、“あぶれもん同士がくっついちょうが”とかぬかすから」
 私もあの時は、ショックで言葉を失った。 
「……俺な。ユズが、アイツらの結婚式の時、凛子の事、何とも言えん顔して見てたん、気づいてた。でも、俺はそれに気づかんふりしてた。ユズがまだ、啓太の事、引きずってるって」
「それ、違うっ!」
 私の荒げた声に、智哉が瞠目した。大変だ。こんなとんでもない勘違い、早く正さなくちゃいけない。
「確かに、凛子の花嫁姿綺麗だなぁ、とかは思ったけど、凛子、恨んでやる! 啓太、カムバック! なんて、これっぽっちも思ったりはしなかったよっ!?」
 ぐいっと、私の体を更に締め付けるように彼が力任せに抱きしめた。
「でも、結婚式ってええな、とかは思ったん、ちゃう?」
「……それは、まぁ、あの頃はね。まだ子どもだったし、夢と憧れだらけで、現実見えてなかったし」
 はぁ、と。ため息と共に、私を縛る力がゆるんだ。
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