初春にて。
「……お腹、空いた」
 寝室の天井の染みを見つめながら、私が独り言ちると。
「……うん、俺も。めっちゃ空いてる」
 すぐ隣から、彼の声がする。
 ひとしきり彼は感情をぶちまけると、少し気持ちが楽になったと言って、やっと笑ってくれた。私もつられて、小さく笑った。
 それから二人で手をつないで、そのまま静かに寄り添いながら横たわっていたら、言葉も行為もなくったってちゃんと心の奥底ではつながっている、そう感じた。
 啓太とはこんな柔らかい時間を過ごしたことは一度だって無い。こんな風になれるのは、智哉とだからこそだ。
 私は、えいっ、と起き上ると、極力明るい声で言う。
「じゃあ、ガッツリ食べよ? お雑煮」
 うん、と。彼が破顔して返事してくれたから、私もつられてにっこり笑う。
「でも、その前に」
 私は再びベッドに引き戻される。
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