初春にて。
「ね、お雑煮、どうする?」
「うーん、どっちでもええけど」
木製の匙をかじりながら、興味のない風に言う。以前は『丸餅に白味噌、異論は認めひん』とか言っていたのに。
「あ、やっぱりユズカん家(ち)の方。ガッツリ食べたいから」
「りょうかーい」
彼は京都出身だから、焼いた丸餅に西京味噌仕立てのお雑煮が基本。具は拍子木切りの京人参と大根のみで、白っぽいお汁にほんのり浮かぶ紅白の色味がなんとも雅やか。ふんわり甘辛でほっこりする味だ。
対して私の方は鰹出汁ベースの澄まし風。具材は基本、筍や椎茸、鶏肉、それからかまぼこに三つ葉に、とにかく、これでもか! とばかりに色んなものが入っている。要は、おせち作りで出た残りや端っこを突っ込むという、結婚式まで会費制で行ってしまうこの地方ならではの『合理性』に基づく代物。お餅はもちろん、包丁で切りっぱなしの角餅だ。
そう言えば、初めて彼が我が家のお雑煮を食べた時、妙に感動していたのを思い出す。
——うわぁ〜、何やコレ。御馳走やんか。
父も母も、そして私も、彼の本気の驚き具合には大笑いしたものだ。
「うわっ。何やコレっ!?」
彼の大声に包丁を持つ手元が狂う。
「あっぶなぁー」
鶏肉の脂でぬめる手を布巾で拭いつつ、彼の元へと駆け寄ると。
「こいつら、正月早々、なに考えてんねや」
やっぱり、彼の手には例の招待状が握り込まれていた。
「うーん、どっちでもええけど」
木製の匙をかじりながら、興味のない風に言う。以前は『丸餅に白味噌、異論は認めひん』とか言っていたのに。
「あ、やっぱりユズカん家(ち)の方。ガッツリ食べたいから」
「りょうかーい」
彼は京都出身だから、焼いた丸餅に西京味噌仕立てのお雑煮が基本。具は拍子木切りの京人参と大根のみで、白っぽいお汁にほんのり浮かぶ紅白の色味がなんとも雅やか。ふんわり甘辛でほっこりする味だ。
対して私の方は鰹出汁ベースの澄まし風。具材は基本、筍や椎茸、鶏肉、それからかまぼこに三つ葉に、とにかく、これでもか! とばかりに色んなものが入っている。要は、おせち作りで出た残りや端っこを突っ込むという、結婚式まで会費制で行ってしまうこの地方ならではの『合理性』に基づく代物。お餅はもちろん、包丁で切りっぱなしの角餅だ。
そう言えば、初めて彼が我が家のお雑煮を食べた時、妙に感動していたのを思い出す。
——うわぁ〜、何やコレ。御馳走やんか。
父も母も、そして私も、彼の本気の驚き具合には大笑いしたものだ。
「うわっ。何やコレっ!?」
彼の大声に包丁を持つ手元が狂う。
「あっぶなぁー」
鶏肉の脂でぬめる手を布巾で拭いつつ、彼の元へと駆け寄ると。
「こいつら、正月早々、なに考えてんねや」
やっぱり、彼の手には例の招待状が握り込まれていた。