もう、誰も好きにならない。
靴を脱ぎ、二宮くんの後を追いかける様に廊下を歩くと
「風呂、ココ。 沸かすか??」
二宮くんが足を止めた。
「シャワーで充分だよ。 ありがとう」
そんなワガママなんて言えない。 それに、本当にシャワーだけでイイ。 サクっとお借りして、さっさと帰らなければ。
ペコっと頭を下げると
「オマエさぁ、スゲエよな。 フツーに男の家に上がれるのな。 軽いよな。 何されても文句言えねぇから。 たまに『そんなつもりじゃなかったの』とか純粋ぶる女がいるけど、オマエもそっち系??」
下げた頭の上で、二宮くんが鼻で笑った。
「・・・・・・・・・・・・別にイイよ。 ワタシは『さすがビッチだなー。 あ、タオルは棚の中な。 シャンプーとか、どれでも好きなの使ってイイから』
『別にイイよ。 ワタシは二宮くんの事を信用しているから』言おうとした言葉を、二宮くんによって遮られた。
「オレ、オマエに欲情する程ビッチじゃねーわ。 じゃあ、オレは部屋で着替えてくるから、ごゆっくりどうぞ」
そして、貶されながら振られた。
ムカついて、悔しくて、恥ずかしくて、涙が込み上げる。
だってワタシは『二宮くんが望むなら』とちょっとでも考えたから。
好きな男に振られて、友達を失って、辛くて淋しくて
何だかんだ手を貸してくれる二宮くんとなら、そうなってもイイと思った。
二宮くんはワタシに好感もなければ、味方でもない事を、改めて思い知らされる。