薔薇の夢をあなたに

「珍しいだろう…僕が泣くなんて…」
目の端をぬぐう。






「ああ、少なくとも俺は初めて見たな。」
みんなが病室から出て行って、あとに残ったのは僕とデイヴィスだった。










「僕も驚いたよ。初めて死の恐怖に直面したから…なのかな…」
「人を…頼れるように…なってきたからなんじゃねーの？」
「どういうこと？」デイヴィスは窓に腰かける。











「お前はさ、なんでも一人でやろうとしすぎなんだよ。頭もいいし、才能もあるから仕方ないのかもしんねーけど。


でも、弱いところもあるだろ？そういうところ、見せてもいいんだよ、俺たちは仲間だ。」
デイヴィスは頭をぽんぽんとなでる。












「久しぶりに先輩っぽいな。」
僕はニヤリと笑う。
「俺はお前の兄貴分だからな。」デイヴィスはカラカラと笑った。










「あ、あと。兄貴分から一つ忠告。」
「ん。」僕は首をかしげる。













「女襲う時は、シチュエーションも大事だぜ。理性吹っ飛んだ時は仕方ないけどな。ちなみにこの前盗み聞いた話によると、ジュリエットはＥカッ…」
「疾風よ、悪しきものを払え！」
「ごふっ！！」









デイヴィスはあっという間に窓から外へ落ちて行った。二階だから、死にはしないだろう。










「くそっ…」僕は手で頭を押さえる。顔が火照ってくる。
目をつぶると、ジュリエットの可愛い顔や柔らかい肌、髪のにおいまで、ありありとよみがえってくる。












目覚めて、最初に見たのがジュリエットだったのがよくない。あんな天使の寝顔がそばにあって、理性が吹っ飛ばない方がどうかしてる。











「そろそろ…覚悟を決める…時なのかな…」僕は真っ青な空を見上げた。