薔薇の夢をあなたに
「び…びっくりした…」
私は真っ赤になっているであろう頬を押さえて歩いていていた。










いきなりレイにあんな風に触れられるなんて…
レイが目覚めて、嬉しくて抱きついたら、
気が付いた時にはきれいな顔がすぐそばにあって…あの唇が…










「はっ!」
私はレイの甘いイメージを、頭を振って追い出す。
思い出すと、また体が熱くなる…。














私、男の人から、あんな風に触れられるの初めてだったけど、全然嫌じゃないかったな…というよりも…もっと…レイに…















「って!!!私何考えてるの!!さっきのは寝ぼけてただけよ!!うん!!絶対そう!!」
私は思いっきり叫んだ。と同時に視界にサーシャが目の前に現れた。














「太陽の姫よ…朝からいったいどうしたのだ…?」サーシャは不思議なものでも見るような目でこちらを見ている。












「あっ!サーシャ!!おはよう!!!!」私は一人でじたばたする。









「ふふっ、よくわからんが元気そうで何よりだ。」
サーシャは空色の瞳を細めて笑う。
エルフという種族はもれなく美しい容姿をしているが、この巫女は特に清らかな見目をしていた。













「私!サーシャにお礼を言いたくて!!」
「何だい、太陽の姫よ。」
「ジュリエットでいいわ。あの、レイを…私たちを助けてくれてありがとう!!」私はがばっと頭を下げる。












「気にすることでない。当然のことをしたまでだ。」
「ううん、あのまま森の中をさまよっていても、きっと私たちは何もできなかった。本当にありがとう。」












サーシャはぽかんと私を見つめていたが、やがて口元に笑顔を浮かべた。












「そなたは不思議な姫だね。ジュリエット。仲間と世界を旅して、仲間を想って泣いて、仲間を救ってくれたものへの感謝を惜しまない。まさに王族らしからぬ行動だ。」
「そんな…」












「だから、きっとそなたの目には曇りがないのだろう。私もエルフの巫女として、同じような立場にいるが、そなたのようには振る舞えない。だから、私はそなたがうらやましくもある。」
一瞬悲しそうに瞳を伏せる。













「サーシャ…?」
サーシャは顔を上げた。私にきれいな笑顔が向けられる。
「ジュリエット。少し一緒に歩かないか?」

< 104 / 146 >

この作品をシェア

pagetop