薔薇の夢をあなたに
ガーーーン!!!!
すさまじい音とともに、私たちの足元が崩れた。




「なっ!!」私はあわてて安全な地盤に飛び移る。
その衝撃の中心部を見やる。




レイは再び海の神であるリヴァイアサンを召喚していた。
しかし、形成は決して優位ではないようだ。
レイの目には焦りが見えた。




「レイ!!」私はルビーに飛び乗り、援護に向かおうとした。
「来るな!!!!!」私はビクッと止まる。




「奴の狙いは君だ!!僕は大丈夫だ!君はここから逃げろ!!」
「でも!!!」




「ジュリエット!!」鈴のような声に振り向く。
「サーシャ!!」そこにはサーシャが傷口を押さえて立っていた。




後ろには多くのエルフ族が控えている。
魔族は暴れているが、強烈な光魔法のもとで動きがだいぶ鈍っていた。




「我らが、足止めする…、そなたたちは、その隙にここを離れろ…」
蒼白な顔だったが、瞳に宿る意思は強かった。




「何言ってるの!そんなことはできない!!」
私は構わず、魔族に刃を向けようとした。




「ジュリエット。聞いて。」サーシャは強い目で私を捉える。





「この魔族たちを封印できるのはそなたしかいない。そなたが死んだら、この世界はどうなるのだ…残されたものは…。そなたは希望だ、みなの太陽なのだ。」
サーシャは切れ切れの息で必死に言葉を紡ぐ。




「私は、…そなたに出会えて…幸せだった…そなたには…生きてほしい…」
弱弱しく微笑む。




「サ…サ-シャ?そんなこと…」
サーシャは軽く目を伏せると、再び顔を上げた。目線の先には激しく争う二人の姿がある。





「皆の衆、あの魔族の動きを少しでも留められればよい!いくぞ!!!」美しいエルフたちはいっせいに矢を引き絞る。
聖なる矢が一斉にフードの男に向かって飛んでいく。





金色の光があたりを包んだ。私は目がくらんだ。






ふいに誰かに腰を引き寄せられる。「エルフ族…この感謝は忘れない…」
私はレイの声と体温をすぐそばに感じた。





温かい光に包まれたかと思うと、私たちの姿はエルフの里から消えた。
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