薔薇の夢をあなたに
私たちはたった4人になった。何十人で旅をしていたのに…





私は寝返りを打つ。ロゼットの簡易魔法でテントの中で眠らせてもらっていた。




あの後、私たちは一言も会話をせず、それぞれが眠りについた。私も一人になりたかった。





目を閉じれば、悪夢のような光景が走馬灯のように頭を流れる。
血肉を食らう魔族たち、逃げ惑うエルフたち、そして、意思の宿ったサーシャの瞳…





私は起き上がる。「少し水浴びしよう…」悪夢を振り払おうと、私はテントをでた。





少し離れた木の下で、デイヴィスが寝ているのが見える。足元にはルビーもうずくまって寝ていた。
隣の小さなテントからは優しいロゼットの気配がする。…どうやらぐっすり寝入っているようだ。




私は、“目”を開いてあたりを一度警戒してから、川辺にむかった。





先客がいた。その人は優雅に立膝をついて川面を見ていた。





「…わぁ…キレイ…」さきほどは気付かなかった。
その川は夜空にうかぶ星々を映して、水面をキラキラ輝かせていた。まるで…





「星が流れているみたいだね…」
「…レイ。」





レイはさきほどの荒々しいオーラが嘘みたいに、穏やかな顔をこちらに向けた。
「こんばんは、ジュリエット。」




レイは隣をあけるように、すこしずれてくれた。
私は、そのスペースにちょこんと座る。





二人とも口を開かなかった、美しい川面を飽きることなく眺める。
静かな波に星がかき消されては、新しい星が浮かぶ…





「ここは、【星流れの川】だよ…」レイがぽつんとつぶやく。




「【星流れの川】?」「うん。緩やかで静かな流れに星がきれいに映るから、そう呼ばれている。」





幻想的な流れに目を目を落とす。
「この【星流れの川】は別名【甦りの川】。死んだ魂たちが還っていく流れ…そして、その先では新しい命に還る…そういわれている。」




美しい星たちがどんどん目の前を流れていく。そして二度と見えなくなっていく…
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