薔薇の夢をあなたに
部屋の扉がゆっくり開き、一人の男性が入ってくる。
「おお、ようやく目覚めたようだね。」



ジュリエットその声に勢いよく振り返る。「お父様!!」



その男性はベッドの上の僕たちを見つけると、嬉しそうに眼を細める。
「おう、ジュリエット。早速お友達になったのかな?」ジュリエットは僕を抱きしめていた腕をするりとほどくと、その男性に向かって走っていく。




「お父様!!あのね!妖精さんは妖精さんじゃなくてレイだったの!!すごく王子様みたいなのにね、レイなの!」
「ははは、よくわからんが、よかったなジュリエット。…改めましてレイ。私はエドワード、ジュリエットの父だよ。よろしく。」



ジュリエットと同じ赤い瞳をした精悍な国王は僕に微笑みかける。僕は恭しく頭を下げる。
「命を助けていただいてありがとうございます、エドワード国王陛下。僕はレイといいます。」僕の返しに目を丸くする国王陛下。




「なんと。これは外の話を聞かれていたようだな、賢明な少年よ。」
僕は軽く目を伏せる。「すみません、聞いてはいけないと思っていたのですが…」「いや、構わんよ。そうだな、ジュリエット。」「はい、お父様?」


「レイに何か温かいものを食べさせてやりたい。頼んでもいいかね?」こくこくと首を縦に振るジュリエット。


「コックさんにお願いしてくるね!待っててねレイ。」彼女はぴょんと僕のベッドに飛び乗ると、頬にキスをする。「えっ?」あっという間の出来事で、思わずキスされた頬を押さえる僕。そして驚く間もなく彼女はあっという間に部屋を飛び出していった。




国王陛下はあっけにとられる僕を見ながら笑う。
「ははは。どうやら、相当気に入られたようだな。ほほえましい限りだ。…さて、どうやら私は、しばし君と話をせねばならんようだな。」

すっと赤い瞳が厳しくなる。僕もベッドの上で背筋を伸ばした。
< 129 / 146 >

この作品をシェア

pagetop