薔薇の夢をあなたに
あの後どうなったかは知らない。気が付いたら温かい城のベッドの上に横たえられていた。

切り傷は深く、骨も何か所か折れていたみたいだけど、意識だけはくっきりしていた。体の痛みより、自分の無力さを痛感させられた。僕は好きな女の子一人も満足に守れないクソガキだ。

悔しさとふがいなさに打ちのめされ、僕は食事も満足にできなかった。

もちろん僕とジュリエットは隔離されていた。

何人もの人にどうしてあんな時間に、森の中にいたのか聞かれた。ジュリエットが何を話したのかわからないけど、僕は自分が無理やり彼女を連れ出したと主張した。


国王陛下が訪ねてきたときはさすがに胸が痛んだ。
「レイ。君が罪をかぶる必要はない。ジュリエットは君の制止をきかなかったといっている。本当はうちの娘が君に無理を言ったんじゃないのかい?」

やさしい国王陛下の大きな掌が頭にかぶさる。
「私はレイを信頼しているよ、君があんな時間にでかけることの危険性をわかっていないはずはないんだ。本当のことをわたしだけにでいい、話してはくれまいか。」

言えるわけがない。彼女が僕との記念日を二人で過ごしたいからって理由だけで城を出たなんて。
「いいえ、すみません。僕が好奇心で彼女を連れ出したんです。彼女にはなんの非もありません。」
僕はジュリエットと同じ、国王の燃える赤の瞳をまっすぐ見つめて言った。

「そうか、レイ。君がそういうなら仕方ない。ならば、それ相応の処罰を加えさせてもらう。」そういう王の瞳は、すでに決断した厳しい瞳だった。

僕は傷があらかた完治した時点で、地下牢に移された。1週間の謹慎処分だ。

罪状は、姫を危険にさらしたこと。下手すれば、反国罪で処刑になってもおかしくはなかったが、姫と僕自身の幼さも考慮されて情状酌量となった。
ジュリエットの付き人は、無期限の解任処分となり、僕は彼女に会うことを許されなくなった。

僕は体の半分を失ったような感覚だった。
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