薔薇の夢をあなたに
僕は、ジュリエットとロゼットを素早く城から離した。
そして、デイヴィスとともに騎士団を率いて、国王陛下と王妃のもとへ向かった。
だが、ときはすでに遅かった。
玉座のすぐそばで二人は無残な姿で絶命していた。
二人のすぐそばには黒いフードの人物が立っていた。
「貴様は。」
僕はすぐに思い出す。あの夜のことを。
その人物はあの日のジュリエットを襲った人物と同じフードをかぶっていた。
「こいつじゃない…」
黒いフードは国王夫妻を見下ろしながら、つぶやく。
「本物の王位継承者はどこに隠した。」
振り向きざまにフードが滑り落ちた。目の前のそれは人ではなかった。
悪魔だ。黒い皮膚は不気味に光り、体は信じられないほどにやせ細っている。頭皮からはおぞましい角が生え、黒い翼と細いしっぽがおおきくのぞく。
そして額には赤く浮き出た呪いの五芒星(ペンタクル)。
「大悪魔だ!全員下がれ!!」
僕は鋭く叫んだ。
次の瞬間、恐ろしい爆発が起き、一気に体が外に吹き飛ばされる。
「これは…。」顔を起こすと仲間たちが死んでいた。
ついさっきまで一緒に訓練をこなしていた僕の仲間たちが何人も動かぬ屍になっていた。
「レイ!」デイヴィスが後ろから僕を支え起こしてくれる。
「デイヴィス、君は生きてたのか…。」僕はやっとのことでつぶやく。
悪魔は恐ろしい咆哮をあげ、何かを探している。
「継承者をどこに隠した、封印の継承者はどこだぁああ!」
「デイヴィス。一旦この場を離れよう。ジュリエットが危険だ。」
「なに?このまま仲間を見捨てるのか!?」
「違う!僕はまだあきらめてない!あいつは封印してしまえばいい。だけど、おそらくやつの狙いは姫だ。先に彼女を逃がさないと。」
デイヴィスはほんの一瞬ためらうそぶりを見せた
「わかった、姫を逃がしたらあいつを片付けるぞ。」
だが、すぐに意思を固めてくれた。
僕はすばやく魔法陣を展開し、ジュリエットとロゼットを飛ばした座標と同じ場所に瞬間移動をした。
「レイ!お父様とお母様は!?」
山小屋につくと、ジュリエットは蒼白な表情で涙で顔を濡らしていた。
二人とももう亡くなっていること。身を隠さなければいけないこと。残りの魔物退治は僕が一人で請け負うこと。
矢継ぎ早にその場の全員に告げる。
「レイ。」最後まで聞いたジュリエットが静かに僕の名前をよぶ。
「ジュリエット。時間がないんだ、手短に。」自分でもびっくりするくらい冷たい声が出た。
ジュリエットは一瞬その声にびくっと体を震わせて、でもしっかりとした目で僕を見る。「私は、あなたと共に残るわ。」
デイヴィスが怒ったようにジュリエットの言葉に反応する。
「姫様、あなたは自分の立場がわかっていないのか!あんたは死んではいけない人なんだ!」
「わかってる!!でも、もう私はレイと離れ離れになりたくないの!!」
ジュリエットは泣きながら僕の胸に飛び込んできた。
「レイ、もう私はあなたを失う悲しみには耐えられないの…、お願い、私を置いていかないで、あなた一緒なら、私もう死んでもかまわない…。」
消えそうな声でジュリエットは訴える。
「ジュリエット…。」僕は彼女の体を抱きしめるしかなかった。
「顔を上げてジュリエット。」僕は彼女の顎を支えて持ち上げる。
「僕は必ず生きて君のもとに戻るよ。それまででいい。ほんの少しの間、逃げていてほしい、安全な場所で僕を待ってて」
「いや!!私はもう…」
「ジュリエット。よく聞いて。」
僕は両手で小さな彼女の顔を包み込む。そして親指で唇に滲んでいる血をぬぐいとる。
「約束する。必ずまた生きて会いに行くよ。だって君は、5年もいい子で僕のことを待ってくれた。もう僕は君を傷つけない。強くなったんだ。だから僕を信じて。ジュリエット。」
小鹿のように震える彼女は、血で濡れて、顔は真っ白になっていた。それでも美しいと思った。この世でもっとも愛しい存在だと思った。
美しい姫君に僕は魔力を高めて、そっと顔を近づけた。
今度こそ僕が君を守って見せる。君のすべてを守るよ。
僕は愛する姫君に封印の口づけをした。
悲しい記憶の封印を。君がすべてを忘れてこの死の地から逃げるために。
そして、デイヴィスとともに騎士団を率いて、国王陛下と王妃のもとへ向かった。
だが、ときはすでに遅かった。
玉座のすぐそばで二人は無残な姿で絶命していた。
二人のすぐそばには黒いフードの人物が立っていた。
「貴様は。」
僕はすぐに思い出す。あの夜のことを。
その人物はあの日のジュリエットを襲った人物と同じフードをかぶっていた。
「こいつじゃない…」
黒いフードは国王夫妻を見下ろしながら、つぶやく。
「本物の王位継承者はどこに隠した。」
振り向きざまにフードが滑り落ちた。目の前のそれは人ではなかった。
悪魔だ。黒い皮膚は不気味に光り、体は信じられないほどにやせ細っている。頭皮からはおぞましい角が生え、黒い翼と細いしっぽがおおきくのぞく。
そして額には赤く浮き出た呪いの五芒星(ペンタクル)。
「大悪魔だ!全員下がれ!!」
僕は鋭く叫んだ。
次の瞬間、恐ろしい爆発が起き、一気に体が外に吹き飛ばされる。
「これは…。」顔を起こすと仲間たちが死んでいた。
ついさっきまで一緒に訓練をこなしていた僕の仲間たちが何人も動かぬ屍になっていた。
「レイ!」デイヴィスが後ろから僕を支え起こしてくれる。
「デイヴィス、君は生きてたのか…。」僕はやっとのことでつぶやく。
悪魔は恐ろしい咆哮をあげ、何かを探している。
「継承者をどこに隠した、封印の継承者はどこだぁああ!」
「デイヴィス。一旦この場を離れよう。ジュリエットが危険だ。」
「なに?このまま仲間を見捨てるのか!?」
「違う!僕はまだあきらめてない!あいつは封印してしまえばいい。だけど、おそらくやつの狙いは姫だ。先に彼女を逃がさないと。」
デイヴィスはほんの一瞬ためらうそぶりを見せた
「わかった、姫を逃がしたらあいつを片付けるぞ。」
だが、すぐに意思を固めてくれた。
僕はすばやく魔法陣を展開し、ジュリエットとロゼットを飛ばした座標と同じ場所に瞬間移動をした。
「レイ!お父様とお母様は!?」
山小屋につくと、ジュリエットは蒼白な表情で涙で顔を濡らしていた。
二人とももう亡くなっていること。身を隠さなければいけないこと。残りの魔物退治は僕が一人で請け負うこと。
矢継ぎ早にその場の全員に告げる。
「レイ。」最後まで聞いたジュリエットが静かに僕の名前をよぶ。
「ジュリエット。時間がないんだ、手短に。」自分でもびっくりするくらい冷たい声が出た。
ジュリエットは一瞬その声にびくっと体を震わせて、でもしっかりとした目で僕を見る。「私は、あなたと共に残るわ。」
デイヴィスが怒ったようにジュリエットの言葉に反応する。
「姫様、あなたは自分の立場がわかっていないのか!あんたは死んではいけない人なんだ!」
「わかってる!!でも、もう私はレイと離れ離れになりたくないの!!」
ジュリエットは泣きながら僕の胸に飛び込んできた。
「レイ、もう私はあなたを失う悲しみには耐えられないの…、お願い、私を置いていかないで、あなた一緒なら、私もう死んでもかまわない…。」
消えそうな声でジュリエットは訴える。
「ジュリエット…。」僕は彼女の体を抱きしめるしかなかった。
「顔を上げてジュリエット。」僕は彼女の顎を支えて持ち上げる。
「僕は必ず生きて君のもとに戻るよ。それまででいい。ほんの少しの間、逃げていてほしい、安全な場所で僕を待ってて」
「いや!!私はもう…」
「ジュリエット。よく聞いて。」
僕は両手で小さな彼女の顔を包み込む。そして親指で唇に滲んでいる血をぬぐいとる。
「約束する。必ずまた生きて会いに行くよ。だって君は、5年もいい子で僕のことを待ってくれた。もう僕は君を傷つけない。強くなったんだ。だから僕を信じて。ジュリエット。」
小鹿のように震える彼女は、血で濡れて、顔は真っ白になっていた。それでも美しいと思った。この世でもっとも愛しい存在だと思った。
美しい姫君に僕は魔力を高めて、そっと顔を近づけた。
今度こそ僕が君を守って見せる。君のすべてを守るよ。
僕は愛する姫君に封印の口づけをした。
悲しい記憶の封印を。君がすべてを忘れてこの死の地から逃げるために。