薔薇の夢をあなたに
「ロゼット!お前はジュリエットを何としてでも守れ!前線から下がって、ジュリエットの部屋に結界を張れ、命に代えても守り抜け。」

団長は見たことのない恐ろしい顔で叫んだ。
「了解です!ジュリエット!いくわよ!!!時間がない!!!」

ロゼットさんにすごい勢いで腕を引かれる。

「イヤァ!!!私も戦う!!離して!!」

力の出ない私は意思とは裏腹に、あっという間に部屋まで押し戻された。

「5…4…3…2…1…」ロゼットさんはテントの結界魔法を解除した。

何千枚ものガラスが砕けるような音がして、身の毛のよだつうめき声とむっとする硫黄のにおいが流れ込んできた。

奴らが攻めてきた。

「絶対におとなしくしてて!!」

ドンっと部屋に投げ込まれて、顔を上げるとそこはもう結界の中だった。外ではロゼットさんが額に汗を浮かべて何重にも結界を重ねていた。

「ここから出して!!なんで私だけ!!みんな死んでしまう!!」

「私たちは自分で生き延びる!!あんたはいいからそこにいて、足でまといなのよ!!」

こちらも見ないで愛用の短い杖を構える。その横顔は殺気に満ち、美しい瞳は見たことないほど鋭かった。

この、大魔法使いに比べれば…足手まといという言葉に私は力なく座り込んだ。
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