薔薇の夢をあなたに
「ロゼット!!そいつはダメだ!!!」
その時、男の背後から団長が現れた。
目を疑った。顔の半分はやけただれ、右足が折れているのが分かる。しかも、無数の切り傷、呪いの痕跡も見られる。
「団長!!!!!!」私は悲鳴をあげた。
その声に反応したのか、フードの男は手のひらを私にかざした。
パリンっ
私を守っていた結界が全て砕けた。
「ジュリエット!」
二人の悲鳴が聞こえる、私は反応して次の一撃を避けた。
私がもと居たところには、黒い焦げ跡があった。
考えている暇はなかった。ドレスの裾を思いっきり破く。気付くとロゼットさんが部屋に入ってきて、私の前に立つ。
なんと団長は廊下の入り口で倒れている、あの出血…おそらく致死量だ。
一時期は潜んでいた悪魔たちが再び現れる。部屋の中はあっという間に悪魔でうめつくされた。
私はかたっぱしから切り捨てた。切りつけた勢いで後方の悪魔を薙ぎ払い、心臓を突き刺す。悪魔の黒い返り血で切っ先が濡れた。
視界の奥では、フードの男がゆっくりと迫ってきていた。弱ったところを狙うつもりだ。
頭を使う余裕なんてなかった、ただ目の前の敵を切るしかない。生き残るためには。
突如、部屋の中を突風が吹いた。一瞬すべての悪魔が部屋の外に押し出される。
「ジュリエット!!!!」
ロゼットさんが私の足元に魔方陣のカードをなげつけた。瞬時に魔方陣が開き、私の足元に浮かぶ。気付くと、紫のもやで何も見えなくなる。
「ジュリエット様…どうか御無事で…」
ロゼットさんの最後のつぶやきも聞こえなかった。私はひとり異世界にねじ込まれた。