薔薇の夢をあなたに
彼はあっという間に、小さなワゴンに食事を乗せて戻ってきた。

私は体を起こそうとした。

「痛ッ…!」

体のあちこちが不自然に痛む、うまく起き上がれない…

「まだ無理はしない方がいい。かなりの距離を移動してるみたいだ。しかも一瞬で。」

少年がゆっくり支え起こしてくれる。その時に気が付いた。私、足が動かない…

「あ…あ…」
信じられない…、動かない…。

涙が急に溢れてきた。
「動…け…動いてよ!!」

少年が察したのか、布団をはいでくれる。

二本の脚はきちんとそろってあった、けどどんなに頑張ってもピクリとも動かない。

「ジュリエット…落ち着いて…」

少年がほほの涙をぬぐってくれる。

少年は私の足に手を置いた。触られた部分に温かみを感じる。

「ほら、感覚はあるだろう?時空移動の副作用みたいなものだろう、そもそもこの魔法は人間を運ぶようにはできていないからね。」

少年は短く詠唱した、足に置かれた手が青く光る。

温かさがじわっと広がってきて、凍っている何かが解けていくように感じた。

「少しずつだけど、僕の癒しの魔法も施している。しばらく休めば必ず治る。だから落ち着くんだ。」

今度は、掌がおでこにあてられる。同じように癒しの青い光を感じた。

「せっかく目覚めてくれたんだ。ひとまず何か食べよう。」

美味しそうなスープとハチミツのかかったヨーグルトが前に置かれた。

「…ごめんなさい…食欲がないの…」

「でも、無理してでも食べないと回復が遅くなる。ほら。」

彼は、スープですくって差し出してくれる。
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