薔薇の夢をあなたに
「あなたは…いったい誰なの…何で私に…」

「僕はレイ。魔法使いだ。」

短くそう答える。

「君は三日前、僕の城に迷い込んだ、全身血まみれで傷だらけだった、放っておくと死ぬと思った。だから助けた。」

あぁ、そうか…私は傷だらけで…血まみれ…で…


















「アアァアアァ!!!!!!!」

絶叫した。私は思い出さなければいけなかったのだ、あの惨状を。

「ウァア、、ア、ア…」
涙と嗚咽で吐きそうだ。

レイは何も言わず再び癒しの魔法をかける。少しずつ興奮が収まっていく。
いや、冷静になれば向き合わなければならなくなる。やめて…その手を離して…

にらみつける瞳に構わずレイは私の興奮を完全に鎮めてしまった。

ベッドの横の椅子に腰かけて、私と目線を合わせる。

「落ち着いた…ね?では、僕から話そう。
君は三日前、ここに無理やりの時空移動で飛ばされてきた。体中悪魔の返り血と、魔法の焦げ跡だらけだった。

着ていたドレスには魔族特有の硫黄のにおいが染みついていたよ。時空移動の魔法の痕跡を辿ると、君はどうやら【星の国】から飛ばされてきたらしい。

悪魔に襲われ、危機一髪逃れてきた、というとこだろうと僕は推測している。

以上が僕が君に関しての推測だ。さぁ、今度は君から話をきかせてくれるかい?何があったんだい?ゆっくりで構わない。」

彼は穏やかに語った。そして、次は私の番だと言う。

この人はなぜ、私を助けたのだろう。
魔族に襲われた娘を匿うなんて、何かしらの被害が自分にも及ぶかもしれない。

我ながら、こんなわけのわからない娘を平気で城に招き入れるなんて、どうかしてるとしか思えない。

だけど、私の心はレイを信用していた。なぜかわからないけど、この人は信頼できるという確信。

なつかしいような、ずっと知っていたような感覚…

「私はジュリエット…旅芸人をしていたの…」

心のままに語りだした。


16歳でデビューしたこと。

王様に夜会に招かれたこと。

そして、夜会当日に魔族の襲撃にあったこと…

「ありがとう。よく頑張って話してくれたね。ここにいれば君の安全は約束しよう。」

レイは涙の止まらない私を、ずっと慰めるように撫でてくれた。
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