薔薇の夢をあなたに
「そうか…やはり思った通りか…。」

ふと、思案するように手で口元を覆う。
何気ない所作も本当に上品な人だった。

「あの…私…ここを出ます。」

「何を言う。その体じゃ無理だ。」

「でも!!仲間を助けに行かないと…、私だけ安全な場所にいても!!」

意思とは裏腹に体は痛みでほとんど動かせない。

あぁ、泣いている場合じゃないのに…

「分かった。必ず僕がもとの場所へ連れて行こう、だけど一週間は絶対安静だ。君は自分で思っているより重傷だ。」

ふかふかのブランケットをかけなおされる。

「さぁ、何も食べられないならまた深く眠るんだ。しばし、幸せな夢が見れるようにまじないをかけよう、おやすみ。ジュリエット」

またあの青い光に包まれて、私は意識が飛んでいく。

とても幸せな夢を見た気がする。幼いころの素敵な、無邪気な恋の夢を…

相手の少年の顔だけが妙にはっきりしなかった。
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