薔薇の夢をあなたに
今日のレイはいつものゆったりとしたローブ姿ではなく、かっちりとした黒の軍服姿だった。ところどころに赤い刺繍が見える。

細身の服にスマートな体型がよく映える。

美しいという印象が強い人だったけど、今日はとても「かっこいい」と思った。

「足、もう大丈夫みたいだね。」

「えぇ、もう支え無しでも普通に歩けるわ。あなたのおかげよ、ありがとう。」

私はにっこり笑った。

「あと…」
レイの顔にほんのり赤みがさす。

「君はいつも可愛らしいけど…今日は特に…とても…美しいね…」

あっという間に背けられた顔。でも、まだ少し赤い。気がする…




「あ、ありがとう…、でも、私なんかより…今日のレイはすごくかっこいいよ…」

私も最後まで言い切れず、恥ずかしくなってしまう。

あぁ、こんな予定じゃなかったのに…!

お互い赤くなって、気まずいようなくすぐったいような沈黙が流れる。

「あの、実はエリーから君が最近部屋でずっとふさぎこんでるって聞いて…」

エリーという言葉にはっと振り向く。

「僕は君にひどい態度をとってしまったね、傷つけてしまったよね…すまない。もし、まだ間に合うなら、お詫びさせてほしい。
今日は、君さえよければ、僕の好きな場所に一緒に来てほしいと思って、誘いに来たんだ。」

「私の方こそごめんなさい…レイは忙しいのに…」

「今日は大丈夫。いくら僕でも、一日くらいお休みしたって罰は当たらないさ。」

「あの…レイが連れて行ってくれるなら、どこでも嬉しい…。ありがとう…」

エリーは打ち合わせとは全く別の切り口で、
レイを連れてきてくれたようだ。

彼女らしいと言えば彼女らしい。

「明るいうちに帰ってきたいから、早いけど出発しようか。準備は大丈夫?」

「うん!!」

私はバッグを掴んでレイと部屋を出た。

隣で並んで歩くと、車いすの時では気付かなかったことにたくさん気づく。

思っていたより身長が高いこと。

私の歩調に合わせて歩いてくれていること。

そして、ふんわりと香るやさしい香水の香り。

決してきつくなく、本当に近づかないとわからない。とてもいい匂いだと思った。

ついた場所は馬屋だった。

「ジュリエット、乗馬は得意かい?」

「えぇ。あっ、でも…」

自由に動けるようになったとはいえ、まだまともなリハビリはほとんどしていない。

足の力のない状態で馬に乗るのは危険だ。
いつ落馬するか分からない…

私の顔色を感じ取ったようにレイは一頭だけ馬屋から引き出した。

「僕と一緒に行こう。君は僕が支える。」

「あ、ありがとう!」

きれいな銀色の毛をした馬だった。

「僕はこの子と一番仲がいいんだ。『シルバー』と呼んでる。」

「よろしくね、シルバー。」

主に似て美しい馬は、おとなしく頭を下げた。
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