薔薇の夢をあなたに
「よし。これぐらいでいいかしら…。」
鏡の中の自分は、派手すぎない、落ち着きのある上品なメイクでこちらを見返している。
黒いロングヘアに同じく漆黒の瞳。いつもとちがうのは緊張で紅潮している頬ぐらいだろうか。アクセントのパープルのアイシャドウは妖しく輝いている。
「うん。悪くない。」
髪は、少しでも大人っぽく見えるように、緩やかなウェーブをかけてそのままおろしてみた。
いつもは邪魔な髪をポニーテールにまとめている私。久しぶりに腰で揺れる自分の髪を感じ、随分伸びたことに気が付く。
黒くつややかな髪は光をうけてきらめいた。
純白のミニドレスに着替え、同じく純白のハイヒールに足を入れる。
16歳になって初めてのステージへのわくわくで胸が高鳴るのを感じる。
私は自分で両頬を軽く叩いて、楽屋を飛び出した。