薔薇の夢をあなたに
「実は、姫様をここに送った後、あんなに執拗に攻めてきた悪魔はあっという間に去ってしまったのです…」








静かに耳を傾けていたレイが口を開く。
「それは…奴らの狙いは姫だったという、ことか?」
デイヴィスはうなずく。








「姫様の安否を確認しに、すぐにでも飛び出したかったのですが。
その前に私たちは、周辺の民家に被害がなかったか確認していました、





そこに【星の国】の騎士団が参りました。そして、私たちは犯罪者の疑いをかけられ捕えられてしまったのです。」











「どうして!?」私は驚きのあまり立ち上がってしまった。








「悪魔を召喚したと思われてしまったのです。はたから見れば仕方のないことです…」
ロゼットが悲しそうにつぶやく。








「でも心配はありませんでした。アレン国王が助けて下さったのです。」
「アレン様が?」
「はい。団長と面会をしてくださり、事情を理解していただき、すぐに釈放してくださいました。ただ…」







口をにごすロゼット。私は首をかしげた。









「実は、俺たちの解放の際に、アレン国王は一つ条件を出した。
それが、行方不明になった姫様を探し出して、自分に再び会わせてくれないか…と…」








私のデビュー公演の夜。髪に優しく口づけて、また逢いたいと囁いてくれた美貌の王様…
あのお方がそこまで私のことを思ってくれているなんて…







私は胸がぎゅっと締め付けられるような思いがした。








「【星の国】の王に僕らが【太陽の国】のものだと知らせたのか?」
レイが鋭く尋ねる。







「いや、素性は全く明かしてない。ただの旅芸人がたまたま悪魔に襲われたんだと思ってくれているはずだ。」





「じゃあ、なぜ姫にそこまでこだわっている?【太陽】の姫だと知らないんだろう?」
「あぁ…それは…」
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