薔薇の夢をあなたに
「きっとアレン国王は姫様の歌声に、容姿に、魅入られているのだと思います。」
「ちょっと!!ロゼット!!?」







突然、わけわからないことを口走るロゼットに驚く。










「姫様は大変お美しい方なので、今までもこういった好意を寄せる殿方は多くいたのですよ。
ただ、姫様に近づく前に私たちが“処理”していただけですわ。」
キラリとした笑顔で言うロゼット。








“処理”という言葉が恐ろしくて、私はそれ以上聞けなかった…。
レイはなんだか青い顔になってしまったが、おとなしく椅子に腰かけなおした。











「こうして、アレン国王の協力のもと、ようやく俺たちは移動魔法の痕跡をたどってここまでたどり着くことができました。
姫様、迎えが遅くなってしまいすみませんでした。」
椅子を降り、跪く。








私はあわてて言った。
「顔を上げてよ、デイヴィス!私は本当に大丈夫だったんだから!レイもいてくれたし!」
私は愛しい魔法使いに笑顔を向ける。












レイは一瞬目を合わせてくれたが、すぐにうつむいてしまった。
「以上が今の時点で、俺たちから話せるすべての情報です。」
ここで、デイヴィスの長い語りはようやく一段落した。










「三つの石の伝説…あんな大昔のおとぎ話…
でも、状況証拠から見て信じるしかないみたいだな。」








レイは青い瞳を暗い海の色に染めてつぶやいた。
まだ、少し考えがまとまっていないようで、美しい口元に手をあて、一人思案しているようだ。







ふと、私この赤い瞳もあんな風に鮮やかに色が変わるのか疑問に思った。








「さぁ、時間も遅くなってきた。一気に済ませよう、レイ。今度は君の番だ。」
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