薔薇の夢をあなたに
私は冷たい墓石に指を滑らせた。
「…お父様…お母様…」
レイが隣にしゃがんで、私の冷たすぎる指を握ってくれた。







「本当に死んじゃったんだね…」なぜか涙がまったく出てこなかった。
悲しくて、つらくて、耐えきれないほどなのに、枯れてしまったように涙がこぼれる気配すらなかった。









私は抜け殻のように墓石を見つめ続けた。
その時、私は優しいぬくもりに包まれた。










「ジュリエット、もう我慢しなくていい。」
レイが後ろから強く抱きしめてくれていた。






「もう我慢しなくていいんだ。君は【太陽】の姫である前に、一人の女の子だ。」
きっぱりとレイは言った。







「…普通の…女の子…?」
「そうだよ、君は普通の女の子だよ。」
その言葉に何かが壊れる音がした。









「わ、わたし…一人ぼっちになっちゃった…。」
目が熱くなる。







「お父さんもお母さんもいなくなっちゃった…国もなくなっちゃった…」
どんどん熱いものが瞳からこぼれていく。









「わかんないよ…悪魔とか…封印とか…」
もう前が見えない。





「わかんないよ!!王位なんてわかんない!!私は何にもわかんないよ!!うわぁあああああああ…」
















分からない、分からない、分からない…。
お父さん、お母さん、何で私を一人ぼっちにしたの?
私の花嫁姿が見たいって言ってたじゃない…まだ、見せてないよ…





お母さん、早く孫の顔が見たいって言ってたよね…?全部全部まだなんだよ…?どうして?ねえ?なんで、いないの…?





私が一人で国を守るの…?そんなの無理よ…?ねぇ…何にもわかんないよ…
かたき討ちなんて分かんないよ…これから…私、どうしたら…いいの…




私は、ただひたすら、レイの胸にすがって泣きじゃくり続けた。
< 68 / 146 >

この作品をシェア

pagetop