薔薇の夢をあなたに
その空間は全てが燃えていた。
私は目を開けることすらできない。
身体が燃やされる…私は必死に氷属性のシールドを張る。






しかしものすごい火炎につつまれ、作ったそばからどんどん溶かされてしまう。ものすごい集中力で私は常にシールドを張りつづけた。
火に当てられて霞んでいた視界がようやく戻ってくる。








そこは巨大な円形の部屋だった。
炎の海に覆われた部屋の中央部に祭壇が見える。
「…あそこね。」








私は灼熱をなんとか凌ぎながらじりじりと進む。
「熱!」少しでもシールドに注ぐ魔力を削ると、あっという間に炎に飲まれる。
ありったけの魔力を使い、私はようやく祭壇までたどり着くことができた。






ここまでは、火の手はこないようだ…。
「みんな…」振り向いてもそこには誰もいなかった。







王族の血だけが…鍵となる…
私は意を決して祭壇を進む。あちこち服が焼けてひどいやけどになっていたが、見ないようにしていた。
恐怖で動けなくなることだけは避けたかった。







その祭壇には、たった一つの石が無造作に置かれていた。
「こ…れ…?」
そこにあったのは小さな小さな宝石の原石だった。そして、
父が守っていた【太陽の石】そのものだった。
光の角度で赤い輝きがこぼれる神秘的な石。
私はその石に手を伸ばした。









「汝、なぜその石を求める…」
突然声が空間にこだました。






私は何か大きなものに弾かれ、祭壇から吹っ飛ばされる。
炎の海に戻され、とっさに氷魔法で自分を守る。
顔をあげると、そこには絵本の中でしか見たことのない伝説の生き物がいた。









「もう一度問おう…汝なぜその石を…力を求める…」
落ち着いた妙齢の女性の声が響く。








突如その空間に現れたのは、巨大なドラゴンだった。
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