薔薇の夢をあなたに
「お待ちになって、レイ様、ジュリエット様」
少し掠れた色気のある声に呼び止められる。

そこにいたのは、おどろくほどの美人。
ブロンドの髪が豊かになびき、ドレスからは収まりきれない胸が大きく露出している。

思わず一瞬自分の胸を確認してしまう私。
…負けた。

「お二人の芸本当に素敵でしたわ…私感動いたしました。」
そう言うと、その女性はするりとレイに腕をからめる。


「!!!ちょっと!!」
明らかに胸があたってる…
いや、押し当てているというほうが正しいだろうか。

「ありがとう…。」
レイも驚いたようにたじろぐ。

「それに…とても魅力的なものを持っていらっしゃる…わ…」

その女性の視線が私をとらえる。
本心の見えないにごった灰色の瞳…


その視線が私の右手の薬指をとらえる。
そこには太陽のリングが輝いていた。

「逃げろ!!!!」レイが叫んだ。
その女性は見る間に一瞬で変化した、身の丈3メートルは超える大蛇だった。

私は身を引こうとしたが、間に合わない。視界の端で毒牙がギラリと光った。




「うわぁああああぁあああ!!!!!!」
私に毒牙が触れることはなかった。しかし、レイが目の前で左肩を抑えて絶叫していた。

「レイっ!!!」



背後でものすごい爆発の音がした。
「ギャーーーーー!!!」

さきほどの女の子たちは蜘蛛の子を散らすように逃げていく。

「ジュリエット!先に片づけますわよ!!」

ルビーが小さい体で、その大蛇に向かって炎をはいていた。私はとっさにペンダントからレイピアをだし、構える。


「あれはバジリスクですわ!絶対に牙に触れてはダメ!!」

恐ろしい姿の大蛇は、紫の巨体をうねらせながらとぐろを巻いている。


「分かった!!」
バジリスクに接近戦はだめだ。
地面を思い切り蹴り、空中で詠唱する。

「地獄の焔よ!!焼き尽くせ!!」

太陽の石によって増幅された火炎は、恐ろしいほどの威力でバジリスクをあっという間に燃やし尽くした。


「レイ!!!!!」

「うぁああああ!!」

私はすぐにレイに駆け寄った。

「レイ!!レイ!!!」

レイは焦点の合わない瞳で絶叫し続けている。肩口には深々と牙跡が残されていた。

「嘘…」
絶望的な傷口だった。


「ジュリエット!とにかく中へ!!」
「うん!」
考えている暇などない、私は必死でレイを運んだ。
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