薔薇の夢をあなたに
「ジュリエットのやつ…ほっといたら、自分の生気の全てをレイに分け与えようとしてた…」

「なんてことを…」

「ロゼット。あいつをレイの看病のローテーションから外せ。」

「了解です…。」

遠くで二人の会話が聞こえる。私はのろのろと体を起こす。…すごく体がだるい。

「ジュリエット!!!」

「ロゼット…レイは?」

「レイ様は今鎮痛剤のおかげで、眠ってるわ。しばらくは大丈夫よ。」
ロゼットが教えてくれる。

「いかなくちゃ…」

私は立ち上がろうとした。

「だめよ、今のジュリエットに魔力は残ってないわ。しばらく回復しないと…」

「私がこの中では一番魔力が強いのよ…私が行かなくちゃ…」

「【黒の団】をなめないで!あんたがいないくらいで、対して変わらないわ!」

強くベッドに押し戻される。

「ジュリエット。意識が戻ったなら、少し聞きたいことがある。」

デイヴィスが歩いてくる。

「そもそも何でお前、あのバジリスクに気付けなかったんだ?」

私ははっとした。

「あ、そうだ…私…」

「普通ならお前の“目”で悪魔に気が付くはずだろう?なんで近づかれても、気付けなかったんだ。」

冷静に考えれば、そうだ。私の魔力なら、あんなに近づかれれば簡単に悪魔を察知できるはずだ。
必死に記憶をたぐる。

「女の人が近づいてきて…私の太陽のリングに目をつけて…気が付いたら変化して…」

「お前の太陽のリングを見て、変化したのか…ならば、狙いは…」

私は見たものを整理しながら考える。
そして白くなった手を握りしめながら確信する。

「あのバジリスク。変化する前は間違いなく人だったわ。悪魔が化けていたわけじゃない。人から変化したんだと思う。」


間違いない。まったく悪魔の持つ独特の違和感がなかった。もしかしたら…

「憑依…されていたのかもしれません…ね。」

ロゼットの発言にうなずく。

「上級の悪魔なら、人間に憑依できるのかもしれない。」

「悪魔が多く地上に来るようになって、上級の悪魔族も、また復活しつつある可能性があるのか…」
デイヴィスはまゆをひそめる。

私は恐怖で震えそうになるのを抑える。今までは「目」のおかげで必ず先手を打てる優位性を持っていた。そのおかげで悪魔相手でもうまく立ち回ってきた。

それが私も気付けないところに悪魔がひそんでいるのかもしれないなんて…

< 95 / 146 >

この作品をシェア

pagetop