月明かりと薄桜 -誠の絆-
「分かったならさっさと消えてよ」
犬を追い払うみたいに
シッシッと手を払われた
馬鹿にされて腹が経つけれど
もうこれ以上彼には何も言いたくなかった
言ったって、彼は何も変わらない
私に対しての敵意は変わらない
ならば何を言っても同じだ
「戻るぞ」
その場から動こうとしない私を
斎藤さんが手を引いた
なんでか足が動かなかったんだ
斎藤さんの手の力は強くて
少し痛いくらいだった
相変わらず無口な斎藤さんはそれ以上何も話さない
そして部屋に戻るまで無言は続いたのだった