月明かりと薄桜 -誠の絆-
お父さんは私を振り払い
私の盾となった
自分の命なんか放り投げて
私の命を守ってくれた
「無様だな」
そう笑う浪士
自分は何もしてないかのように
ケラケラ笑っている
人の命を落とした罪悪感の欠片もないように
そんな彼らに腸が煮えくり返るほど
腹が立ったけれど
今は…
「ねえ!ねえってば!」
地面に倒れこむ家族の姿
悲しみのほうが大きすぎた
誰かこんなことになるなんて
想像しただろう?
桜の木の下は愛しい人の血で染まっていく
「凜…痛くないかい?」
私の頬をそっと撫で
いつもの優しい顔で笑うお父さん
自分のほうが痛くて苦しいはずなのに
こんなときまで私の心配して…
「痛くないよ、痛くないよ」
それだけ言うのが精一杯だった
私は少しも痛くないよ
だから、お願い
生きて…私を一人にしないで…