月明かりと薄桜 -誠の絆-
"手を尽くしましたが"
彼はたしかにそう言った
手を尽くしたって?
がって何?
「先程お亡くなりになられました」
お父さんが、死んだ
そんなの斬られてすぐに分かっていた
あの流れる血の量じゃ生きれない
分かっていたはずなのに
改めて言葉にされると
現実を突きつけられてるみたいで
胸が苦しい
頭の中が真っ白になる
まるであのページみたいに
「…お前行くとこないのか」
さっきの男の人が出て行ってから
少したったとき土方さんが口を開いた
広間には重い空気が流れ
私の泣き声だけが小さく響いていた
「ありません」
唯一の手がかりだったお父さんも死んで
一花だってどこにいるか分からない
手掛かりなんて何もなかった
これから先行き先なんて
もちろんどこにもない
ましてここは文久3年の京の町
現代と町並みは全然違うし
道だって変わっていて知ってるものは何もない
人も、居場所も
何もかも