月明かりと薄桜 -誠の絆-
「どこだったっけなあ…」
本の背表紙を人差し指でなぞりながら
棚の端から端まで目を通す
すると真ん中辺りでなぜか指がぴたりと止まり
一冊の本が目に入った
それは黒い背表紙に
桜が散るようなピンク色の文字で書かれたものだった
「誠の絆…?」
こんな本、昨日あったっけ?
黒の背表紙なんて記憶に残りそうなのに
昨日までの記憶を探ってもさっぱり出てこない
もしかして今日返却されたのかも。
そして興味本位でその本を手にとった。
綺麗。
それがこの本を手にとって
真っ先に思い浮かんだ言葉だった
背表紙からも想像できるように
黒の背景に薄ピンクのタイトル
右上に照らされる綺麗な月の絵
そして薄っすらと舞い散る春の桜
新選組といえば浅葱色。
それと対する黒と桜色が新鮮だった
そして何より綺麗だった
不思議と指が止まり
不思議な雰囲気を放つこの一冊の本
開かずに入られなかった