月明かりと薄桜 -誠の絆-

「悪化してしまっては大変です」


指についた血をただ眺める私を見て

山崎さんはそう言い私の手首を掴んだ


その手はなぜか安心できるもので

私に任せてくださいと言っているようだった




「それではまた」



山崎さんと私は幹部の人たちに軽く頭を下げ広間を後にした

しばらく廊下を歩いて辿り着いたのは

山崎さんの仕事場であろう治療地



そこには誰もいなくて

ただ静かに静まり返っていた



「動かないでくださいね」


床に座り山崎さんに手当をしてもらった

傷には少し滲みたけれど

傷が浅かったおかげか大事に至らなかった

けれども山崎さんは不安そうな顔をしたままだった



「もしかすると顔に傷が残るかもしれません」

「あっ…」


顔に傷が残るというのは

女の私からすると厄介だ


それを山崎さんは知っているから気の毒そうな顔をしているんだろう


でも、現代はファンデーションとかメイク用品はたくさんあるから隠そうと思えば隠せるだろう


確かに傷が残るのは嫌だけど…



「別に気にしないでくださいね」



そう言うと彼は気の毒そうな顔のまま頭を下げた

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