月明かりと薄桜 -誠の絆-
「本当に必要な時だけこの刀を抜け」
土方さんはそう言った
要するに普段は使うなってこと?
きっとそういうことだろう
「てめえが抜けば相手は斬りかかってくるだろう?」
その問いかけに頷くことしかできなかった
今日みたいに斬りかかられたら
例え刀を持っていたとしても
私はその刀を振れない
だって私には人を殺すことができないから
人斬りの時代だとしても
それが許されるとしてもそんなことできない
「襲われそうになっても抜くんじゃねえ。全力で走り抜いて俺らを呼べ。そしたら俺達は全力でお前を守る」
真っ直ぐな彼の瞳は嘘をついていない
土方さんって本当は優しい人だ
突然現れたこの私を
全力で守ると言ってくれたのだから
なんか、嬉しくて仕方ない
「安心してください、逃げ足だけは早いんで!」
彼はふっと吹き出して笑ってくれた
"お前変なやつだな"そう言って笑ってくれた
その瞳は見たことないくらい優しくて
この人なら信頼してもいいかなって
そう思わせてくれた