月明かりと薄桜 -誠の絆-
池田屋事件
夜が更けた頃私は部屋で一人
「どうしたんだろう?」
そう呟いても当然答えは帰ってこないのだった
さっきまで廊下からバタバタと足音がしたり
ふすまに走り回る人の影が写ったりしていたのに
今は恐ろしいくらい物音がしなかった
私を置いてみんなどこかへ行ってしまったんじゃないかってくらい
けれどその考えは
そこまで間違いでもなかったようだ
「だ、だれ?」
静まり返った廊下に
トタトタと走る足音が聞こえてきた
そしてその足音は徐々に大きくなり
しだいにピタリと止まった
するとその音がきえると同時に
山崎さんの声が聞こえるのだった
「神崎さん、そこにいますか?」
緊張感漂うその声は
さらに私の不安を大きくさせるのだった