今宵も、蒼月に誘われて

「…というわけで、今日から女中として屯所で働いてもらうことになった姪の相模くんだ。宜しく頼むよ」

男ばかりの屯所で暮らす。
私の身に危険が及ばないよう近藤さんの姪という設定を設けてくれた。
近藤さん曰く「こんな可愛らしい姪なんて嬉しいことだ」なんだそうだ。
柔らかな陽だまりのような笑みを浮かべる近藤さんの隣に立ち、息を吸い込む。

「初めまして、相模蒼と申します。慣れていないことだらけでお手数おかけしますが手解きのほど宜しくお願いします」

そっと頭を下げると私を包む大きな拍手。中には手を振ってくださる方もいる。

温かいな、本当に。
近藤さんの人柄が滲み出ている。

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