今宵も、蒼月に誘われて
一体どういう風の吹き回しか。
ゆらゆら揺れる水面に映る珍しい蒼い月を眺めながら煙管を蒸す。
薄紫の排煙が真っ暗闇の夜空へと昇り溶けるように消えていく。
今夜はなんだか胸がざわめく。
いつものバカ騒ぎの中、酒に呑まれたわけでもない。
何か悩みがあったわけでもない。
けれど、1人散歩に出ている自分はよくわからなくて。
「…変な夜だな、お前もそう思うだろう?」
川のそばに立つ、大きな柳の木に語りかけるように近付くと煙管を蒸す。