今宵も、蒼月に誘われて
返事などするはずがないことを理解しているものの、そう問いかけずにはいられない。なんとも不思議な感覚の中、小さく苦笑を漏らす。
変な夜だ。
幻聴まで聴こえてきやがった。
誰もいないはずの道。
鳴り響くのは軽く壊れてしまいそうなほど儚い鈴の音。
チリン…チリン…
いくら周りを見渡してみてもそこには人っ子一人いない、況してや猫の一匹さえも。
ただ、そこにあるのは大きな柳の木がゆらゆら揺れているだけ。
「一体どういうわけだ?」
そんな問いかけに応えるように鈴の音が大きくなる。