夜の王(短編小説)
闇を手に。
月に照らされ、私は一時…
闇が支配する宵闇に、ぽっかりと浮かんだ月が一つ。
私はその夜、全く眠れずにベッドの上で寝返りばかり。
無理にでも眠らなければ明日に響く…何より身体は疲れ果てているはずなのに。
ふと、カーテンの隙間からの光が気になった。元来、私は僅かな光など気にせずに眠れるはず。だが…月光は益々強くなるばかり。
カーテンを開け放ち、私は窓辺に座り込んだ。
淡い光の下は、輝きを湛えた海だった。夜の街には誰もいない。静かに、ただ静かに、街は海へと変わっていた。
深海魚が泳ぐ、クラゲがぷかぷか浮いている。鮫や鯨、それぞれに泳ぎながらも、仰ぎ見るのは…月。
私はいつの間にか海上に降り立ち、月光の道が出来た色濃い深みへと歩んで行く。
ズブズブと…体が沈んでいく。
あぁ
私は
海に
なるのだ
夜が明け、何時もの朝が巡る。私は人へと戻る。
そしてまた、私は海になるのだ
END
闇が支配する宵闇に、ぽっかりと浮かんだ月が一つ。
私はその夜、全く眠れずにベッドの上で寝返りばかり。
無理にでも眠らなければ明日に響く…何より身体は疲れ果てているはずなのに。
ふと、カーテンの隙間からの光が気になった。元来、私は僅かな光など気にせずに眠れるはず。だが…月光は益々強くなるばかり。
カーテンを開け放ち、私は窓辺に座り込んだ。
淡い光の下は、輝きを湛えた海だった。夜の街には誰もいない。静かに、ただ静かに、街は海へと変わっていた。
深海魚が泳ぐ、クラゲがぷかぷか浮いている。鮫や鯨、それぞれに泳ぎながらも、仰ぎ見るのは…月。
私はいつの間にか海上に降り立ち、月光の道が出来た色濃い深みへと歩んで行く。
ズブズブと…体が沈んでいく。
あぁ
私は
海に
なるのだ
夜が明け、何時もの朝が巡る。私は人へと戻る。
そしてまた、私は海になるのだ
END