「恋って、認めて。先生」
可愛い内装。店に入るとますます心は弾んだ。店員さんに二人掛けのテーブル席に案内され、比奈守君と向かい合って座る。
「いただきます!」
注文した物が運ばれてくるなり、きなこソフトクリームを手に、私は満面の笑みを見せた。
「おいしいっ!」
「飛星って、甘い物、本当に好きだね」
「うん!これ食べてる時は子供に戻れるから、なんてね」
冗談のように本音を言い、私は改めて比奈守君にお礼を伝えた。
「だいぶ前のことだけど、夕がくれたイチゴオレ、とってもおいしかったよ。仕事の疲れが一気に吹き飛んだ。あの時は本当にありがとね」
「良かった。そう言ってもらえて嬉しい。やっぱり、飛星はあれが一番好きなんだ」
「やっぱりって……?」
しまったと言いたげに、比奈守君は言葉を飲み込んだ。
「気になるなー。何ー?」
「飛星のストーカーしてたわけじゃないからね?」
恥ずかしそうに、比奈守君は話しはじめた。
「新学期の始業式の後、中庭の自販機前で2年の生徒としゃべってる飛星を見た。飛星、その生徒よりちょっと前に自販機来て、イチゴオレ買ってた」
そういえばそんなこともあった!比奈守君に見られてるとは思わなかったけど……。中庭には、木や渡り廊下の壁といった死角が多いから。
あの時、私より後に来た2年の女子生徒もイチゴオレを買いたかったみたいだけど、残念ながら私の分が最後で、イチゴオレは売り切れてしまったんだ。
その子には吹奏楽部の活動があるとかで、演奏の前にはいつも甘い物を飲んでやる気を高めているのだと話してくれた。
私はその後帰るだけの予定だったので、その子にイチゴオレをあげることにした。補充されたらまた買えばいいし。そう思って。
「水族館の時といい、プールの時といい、夕は私を見つける天才だね」
笑って言うと、予想に反して比奈守君は頬を赤くし、私から目をそらした。
「俺も、買う時だいたいあそこだから、その時は偶然。飛星が生徒と色々話してイチゴオレ渡すの見て、本当は自分で飲みたかったんだろなぁって……」
「そんな、名残惜しげな顔してた?平気なつもりだったんだけど」
「平気な顔してたよ。それがすごいなって思った」
褒められて、くすぐったい気持ちになる。
「あの子、部活のこと話す目が輝いてて真剣だったから。万全の状態で部活に参加してほしいなって思ったの」
その時の心情を、私は語った。
「昔から身近でピアノやってる琉生を見てたからよけいかな、音楽に関わっているあの子を応援したくなったの。普段はそういうところをあまり見せないけど、琉生はピアノに触る時別人のようになるんだ。ピアニストになるという夢は叶えられなかったみたいだけど、今もピアノ講師として弾くことや教えることを楽しんでる。吹奏楽部で頑張ってるあの子もきっとそう。部活が楽しくて仕方ないと思うんだ。頑張ってる人を見ると応援したくなる。それだけの話だよ」
私は何も褒められるようなことはしていない。頑張ってる人達がすごいんだ。