「恋って、認めて。先生」
「そうね……。せっかく出会ったんですものね。飛星に好きな人が出来たことは本当に嬉しかったし、出来ることなら私達の意思でそれを壊すような真似はしたくないわ」
それまで穏やかに話していたお母さんは、再び険しい表情で耐えるように語った。
「でも、比奈守さんとのことは認められない」
やっぱり、そう簡単に反対する気持ちは変わらないのかな……。
分かっていたけど、私はどうしても親を説得したかった。
「どうして?私と比奈守君は真剣な付き合いをしてるの。お母さんやお父さんに心配かけることなんて何もないよ」
「今は、ね……」
お母さんは言った。
「万が一私達の身に何かあっても、アンタを支えてくれる人がいれば心配ない。だからどうしても、飛星には結婚してほしいの。お見合い結婚は恋愛結婚より上手くいきやすいと聞くし」
「そんな……!恋愛結婚で上手くいく人もたくさんいるよ?年齢差カップルだって世の中にはたくさんいる!」
違う。私が言いたいのはこんなことじゃない。お母さんが本音を話してくれたんだから、私も正直に全てを話すんだ!
「正直私も、最初は不安だったよ。比奈守君は若いし、未来がある。私とは違う世界にいる人なんだ、って。でも、今は全然そんなこと思わない。比奈守君と一緒に、二人にしか作れない関係を作っていきたいと思ってる。彼との交際を隠していたことは本当に申し訳なかったと思う。ごめんなさい……」
謝る私を見て気の毒そうに眉を下げると、お母さんは弱々しく言った。
「飛星……。あなた達の交際に反対する理由はそれだけじゃないのよ」
「他に何かあるの?」
「今すぐ結婚出来るような相手なら反対なんてしないわ。喜んで祝福する。でも、比奈守さんとはそういうわけにいかないでしょう?比奈守さんもさっき言っていたけど、彼の希望通り大学に行くなら最低でも四年はかかる。就職後にすぐ結婚したとして、その頃アンタはいくつになる?30手前よ」
30までには結婚しろ。親にうるさくそう言われてウンザリしているーー。この時、以前純菜がボヤいていたことを思い出した。
「比奈守さんにも都合があるだろうから、就職してすぐ結婚はできないかもしれないでしょう?そうなったらどう?アンタはどんどん歳だけ取って、結婚や出産の機会まで先延ばしになるのよ?そういうことまでちゃんと考えた?」
「そんなの、人それぞれだよ。今は女性だって働く時代なんだから、30過ぎてから結婚したり妊娠するのも当たり前だし」