「恋って、認めて。先生」
「最近仕事忙しいからな〜。旅行以来、夕とも会えてないんだ」
明るい口調で、私は言った。
「でも、そろそろ会わないとさすがに夕も心配するよね?」
隠すつもりはなかったけど、琉生と純菜にすら、結婚のことをまだ報告できていなかった。
「比奈守君も、ラインで飛星のこと気にかけてたぜ?仕事で無理してるのかもって」
比奈守君、就職や結婚のこと、琉生にもまだ言ってないんだ……。そのことに安堵(あんど)してしまう自分に対して、複雑な気持ちになった。
「明日は合コンだろ?くれぐれも、比奈守君にはバレないようになー?」
前と同じことを念押しし、琉生は苦笑する。
「わかってる。大丈夫だよ」
「飛星は比奈守君に一途だもんね。明日、いい出会いがあるといいなぁ」
「純菜は合コン平気?私はああいうの、ちょっと苦手で」
「私も得意ではないけど、飛星とエモちゃんがいるし、皆大人だし、そんな変なことにはならないかな〜って。学生の時ならともかくさ」
たしかに。純菜の言葉で、私は安心した。明日への緊張感も少し和らぐ。
合コン主催者のエモの先輩も大人だし、学生の合コンみたいにハチャメチャなことにはならない、よね……?参加する男性陣は、エモの先輩の同級生やその知り合いだと聞いている。
「エモちゃんの先輩って、私達の二個上なんだっけ?」
「うん、27歳」
「じゃあ、集まるメンバーでそれより年下なの、エモちゃんと飛星と私の三人だけかぁ」
27歳の男性陣の中に、エモの先輩が狙っている男性がいるらしい。純菜と私は目を合わせ、同じことを口にした。
「その人とだけは絡まないようにしよう!」
楽しげに話す私達につられ、琉生も珍しく同調した。
「おれっちも行きたいなー、明日の合コン」
「琉生が女の子だったら絶対誘ったけど、今回はごめんね。エモの話だと、男の人の方が多いみたいだから」
「女装子(じょそこ)になってもダメ?」
「なおさらダメ!」
女装子=女装男子。そこまでして参加したいなんて、本当に珍しいな。
「あーあ。明日は一人飯かぁ。いっつもこのメンバーでいるから、ぼっち感ハンパないんだけど」
なるほど、そういうことか。三人で仲良くしてるうち、他のメンバー二人が同じ場所に出向くのって、残された一人にとっては寂しいことかもしれない。琉生がいじけるのもうなずける。
「ヨリ戻した彼氏とは、まだビミョーな感じなの?」
純菜が尋ねる。
「ビミョーではなくなったけど、お互い忙しいし、会う時間なくてな」
「こうやって私達に会う時間があるなら、彼氏に会いに行ったらいいのに」
「純菜、さりげなくおれっちのことハブろうとしてないか?」
「そんなことないよ〜!言ってみただけ!彼氏、寂しい思いしてるんじゃないかと思ってさ」
二人のやり取りを見て、私は久しぶりに心から笑うことができた。