「恋って、認めて。先生」
とはいえ、あんなに気遣ってくれるアミさんの提案を遮るわけにもいかない。強引なアミさんの合コン話に乗ったエモの気持ちがよく分かる。
年上なのにそうとは思えないくらい愛らしくて、強引なところもあるのに憎めない。アミさんの恋愛も、今日ここでうまくいくといいな。
「女同士でしゃべってればいいって言ったのにこんなことになって、ごめんね飛星!」
エモが耳元でこっそり謝ってきたけど、私は首を横に振り「大丈夫だよ、楽しむから」と、返した。
席替え後、両隣に座った男性に色々と話しかけられるのは緊張もして困ったけど、ここ最近のことを思うと気分転換になって良かったし、皆が楽しめるのならそれが一番いい。
時折純菜やエモの方を見ると、二人とも楽しそうに男性と話していた。
周りの人に合わせながら私も何度かお酒を追加し、慣れない場にいることの緊張をごまかした。
「飛星ちゃん、可愛いね。今の彼氏と別れて、俺とどう?」
「それはちょっと……」
「そっかぁ、だよね」
「すいません、なんか」
「いーよ。こうやって話してるだけで癒される。飛星ちゃんって、よく天然って言われない?」
天然。学生時代によく言われたけど、私は昔からそう言われるのがたまらなく嫌だった。天然に憧れる女性は多いらしく、男性と接する時の性格設定として偽装天然なるジャンルが存在するほどの人気っぷりだが、私にはそれの良さが全く分からない。天然と言われても、褒められている気がしないのだ。
この人も悪気はないんだろうけど、複雑な気分……。
久しぶりにお酒を飲んで酔いが回ったのか、普段意識しないことに過敏になり、気持ちが荒くなっている。いけないいけない。楽しまないと!
「そんなことないですよ〜」
そう返し、カクテルグラス片手に笑顔を作る。意識して気持ちを明るくしないと!
その時だった。別の男の人の片手が男性と私の間に壁を作るかのように背後から割り込んできた。
「大城先生、こんなとこで何してるの?お前も、飲ませすぎ」
「永斗(えいと)!遅かったな。久しぶり!」
「永田先生!!どうしてここに!?」
今まで話していた男性と私の驚く声が重なった。さっき職員室で別れの挨拶を交わした永田先生が、そこにいる。
もしかして、さっきアミさんが言っていた高校教師って永田先生のことだったの!?