「恋って、認めて。先生」
もう今日は誰にも会えないと思っていたので、純菜の訪問がすごく心強かった。
「ここが一番落ち着くよ」
「遠藤さんって人は?良かったの?」
「うん。エモちゃんは誤解してるみたいだったけど、ホントそういうのじゃないんだぁ……」
私がアミさんとトイレで話している間、席を立った遠藤さんは、たまたま純菜の前を通って店の外に出ようとした。ふらついて足をもつれさせた遠藤さんは、純菜の方に倒れ込んでしまったそうだ。
「一緒に店を出たのは、遠藤さんの体調が悪かったからなの。倒れてきたのを起こした時すごい熱だったし食欲もないみたいだったから、おせっかいかなと思いつつ、彼のこと家までタクシーで送って。一人暮らしだったから、軽く食べれるものも買ってきたりして、その足でこっちに来たから遅くなって」
「そうだったんだ……。そこまでひどかったら、心配になるよね」
「だね。元々遠藤さんは今日の合コンも断るつもりだったらしいんだけど、他の参加者さんに無理矢理連れて来られたんだって。体調悪化したのも仕方ないかも」
男性陣のみんながみんな、今日の合コンに乗り気だったわけじゃないんだな。でも、純菜は出会いを楽しみにしていたのに、遠藤さんの介抱で終わってしまうなんて……。
しんみりしていると、私のスマホが鳴った。
「もしもし、琉生?」
『合コンそろそろ終わった頃かと思って電話した。純菜もいるだろ?今車だし、迎えに行く』
「ありがとう。でも、実はもう、私達帰ってきてて」
『そうなの!?すぐ行くわ!』
20分ほどで琉生が来た。もう夜も深いのに、顔を合わせるなり、私達は昼間のような元気さを取り戻す。
「案外早かったな。合コンってそんなサクッと終わるもん?」
「色々あってさ」
困ったように答える純菜に、琉生は尋ねた。
「いい男いなかった?」
「いい人ばっかりだったけど、恋愛に発展しそうな出会いはなかったなぁ。でも楽しかったよ」
「遠藤さんとは恋愛にならなさそう?」
私が訊くと、琉生は興味津々で話に食いついた。
「あったんじゃん!出会い!遠藤ってどんなやつなの?」
「遠藤さんとはあんまり話してないし、どんな人かよく知らないし、何とも言えないなぁ。でも、連絡先は交換したんだ。今日のお礼がしたいって言われて。そんなのいいって断ったけど……」
純菜は、さっき私にしてくれた遠藤さんとのエピソードを琉生にも話した。すると琉生は、
「弱ってる時に優しくされると弱いんだよなぁ、男って!遠藤だって、今後どうなるか…!」
「琉生ならそう言うと思ったよ」
やんわり答える純菜を見て、私も琉生と同じ予想をしていた。