「恋って、認めて。先生」
「飛星、大丈夫?つらかったね……」
全てを話し終えると、純菜は涙ぐんで私の肩を抱いてくれた。あったかくて安心する。
二人に話したことで、胸のつかえがだいぶ楽になった。
「おじさん達が二人の付き合いに猛反対したとはいえ、結婚話にまで発展するなんてな。比奈守君が飛星に本気なのは見てて分かったけど、18歳の子が結婚なんて、なかなかできない決心だ。普通にすごいよ」
感心したようにうなずき、琉生は明るく言った。
「距離置きたいって言ったのだって、本人は本気のつもりだろうけどほとんど意地なんじゃないか?表面的には突き放しつつ、内心飛星にかまってほしいって思ってるのかも」
「どうかなぁ……。そんな楽観的に考えてたら、後々悪いことが起きた時にショックが大きくなりそうでこわいよ」
しょげる私をミラー越しに見て、琉生は言った。
「忘れたか?おれっちもついこの間まで彼氏と距離置いてたんだぜ?」
「そういえば、そうだったね。なんか、ずっと前の話みたいに感じるよ」
「そうだよな。おれっちもあの時は苦しかったし悲観的にもなったけど、結局元に戻れたし、時間の流れがあの時より早く感じる」
「でも、元に戻った直後はギクシャクしてたんだよね?」
「まあ、なぁ。お互い、そんなすぐ明るくはできないだろ。でも、距離置いて良かったって、今は本気で思ってる。会えない間に感じた寂しさもマイナス思考も無駄じゃなかった」
「琉生と琉生の彼氏みたいになりたいよ」
「なれるさ」
表情を曇らせる私に、琉生は自信たっぷりに言い切った。
「比奈守君のこと好きなんだろ?比奈守君だって同じだよ。会わないでいるうちに、忘れかけてた相手の大切さが分かるようになるんだ。おれっちの彼氏もそうだったからな。離れておれっちの大事さが分かったんだって。親に同性愛反対されてももう気にしないって言ってくれた」
「良かったね」
「恋愛ってそういうもんかもな。好きだからそばにいるのに、そばにいる時間が長くなると相手の欠点ばかり目につくしワガママになる。比奈守君も自分のそんなとこに気付いて自分に嫌気がさしたんじゃないかな。なにせ、永田先生っていう強敵にそこまでズバズバ言われたら、立つ瀬ないだろ。おれっち、比奈守君が気の毒だわ」
琉生の意見はとてもありがたかった。比奈守君と同じ男の人だから、私より分かることが多いのかもしれない。
「おれっちに結婚の報告してこなかったのも、比奈守君なりに飛星のペースを大切にしたかったからじゃないのか?あ、そろそろ着くぜ」