「恋って、認めて。先生」
「比奈守君、飛星との結婚、真剣に考えてたんだな……」
ソフトクリームを一口食べ、琉生がつぶやく。私は何とも言えない気持ちになった。
「普通なら、そこで喜ぶものかもしれない。でも、私は、夕に犠牲を強いてるような気がして仕方ないよ……。やっぱり、夕の言う通りなのかな……。私は教師として夕のことを見てるだけなのかも」
「それはないよ」
純菜がやんわり否定する。
「比奈守君も今は感情的になってるだけ。飛星にちゃんと想われてることは、今までちゃんと感じてたはずだよ。それに、永田先生みたいな人に正論突かれたら同性としてはけっこうつらいかも」
そういえば、純菜は今日初めて永田先生を見たんだ。
この場でただ一人、永田先生の顔を知らない琉生が不思議そうに純菜を見る。
「飛星の話でしか知らないけど、永田先生ってそんなすごいやつなの?比奈守君だってスペック高いのに」
「比奈守君もかっこいいけど、永田先生はまた違う種類のかっこよさがあったよ。想像してた以上。女子生徒に好かれるのも分かる」
「おれっちも見てみたかったな〜!もしかして純菜、お前……!」
「それはないよ」
琉生の言わんとしていることが分かったらしい。純菜は微笑した。
「私、かっこよすぎる人は苦手なんだよね」
「女心は難しいな〜。イケメンならオールオッケーってわけじゃないのか」
「男の人だってそうじゃないの?最終的には中身が大事だよ。一緒にいて安心できる人がいいな」
「それは一理あるな。って!俺は男専門だから女に対してどうこうってのはよく分からんけどな…!」
そう言った途端、琉生の目があやしげに光る。
「いいこと思いついた!!」
「何?」
純菜と私の尋ねる声が重なる。
「もしこのまま比奈守君と飛星の関係に変化がなかったら、おれっちが飛星を好きになったフリしようぜ!もちろん、比奈守君の前で!」
え!?それで夕にヤキモチを妬かせる作戦!?いいかも!……と、一瞬話に乗りそうになったけど、次の瞬間私は冷静にこう返していた。
「それは無理があるんじゃない?だって、琉生に彼氏がいること、夕も知ってるんでしょ?」
「まあ、そこは何とかごまかしてさ!」
「夕は鋭いからそんなのすぐ見破られるよ〜!」
「んー、この作戦はダメか。他になんかあるかなー?」
「ありがとね、琉生。私のために一生懸命になってくれる、その気持ちで充分励みになるよ」