「恋って、認めて。先生」
合コンの時のものだと、すぐに分かる。
日々進化するスマホの画像機能。便利なはずのそれも、この時ばかりは退化してほしいと強く思った。
10メートルほど離れて撮影されたその写真もとい画像は、暗がりの中でも鮮明に永田先生と私の姿を写している。あの時は酔って眠っていたのであまり意識しなかったけど、こうして見ると、永田先生と私は恋人同士にしか見えない。
どこかで生徒に見られていたんだ……。
私同様、しばらく真顔で写真を見つめていた永田先生は、校長先生に向かって頭を下げた。
「僕が軽率でした。本当に申し訳ありません」
「申し訳ありませんでした…!」
私も続けて頭を下げる。情けないことに、永田先生の真似をしないとどうしていいか分からない。予想外のことばかりに直面し、混乱していた。頭痛と腹痛が同時に体を攻めるものだから、よけい思考が鈍る。
校長先生は困った顔で訊いてきた。
「立ち入ったことを訊きますが、あなた方はいつから交際を……?」
「僕達はただの友人です。この時はたまたま共通の友人を交えて夕食に行きました。誤解を与えてしまうのは当然ですが、いかがわしいことは何もしていません」
永田先生がそう説明すると、校長先生はうなずき、納得したようだった。
「そうでしたか……。しかし、これを届けにきた生徒は大変動揺していたんですよ。受験勉強にも手がつかないと言い、取り乱す始末で……。永田先生は女子生徒に憧れられやすいですし、なおさらでしょう」
校長先生は眉を下げる。
「あなた方はもう大人ですし、学校側も教師同士の個人的な交際は特に禁じていません。ただ、教育者として、公の場でこのようなふるまいをされるのはとても困るのですよ。受験生の精神状態が悪いと保護者からの苦情もありえますから」
「申し訳ありませんでした……。以後、気をつけます」
永田先生と私は同時に頭を下げ、校長室を後にした。
そのまま職員室に戻る気にはなれず、私達は自然と中庭のベンチに足を向けた。
「まさか見られてたとはね。女子生徒もけっこうエグいことするな〜。こわいこわい」
永田先生が明るくそんなことを言った。気持ちが弱っているせいか、その気遣いに目頭が熱くなる。
「永田先生まで巻き込んでしまって本当に申し訳ありませんでした。あの時私が飲み過ぎなければ、こんなことにはならなかったので……」