「恋って、認めて。先生」

 彼女達は顔を真っ赤にして泣きそうになっている。教室内は一気にざわついた。

 永田先生はまるでそうなることを楽しんでいるかのように意地悪な笑みを浮かべて彼女達に言った。

「やんわり言っても伝わらないようだし変に期待されても迷惑だからはっきり言わせてもらうよ。子供に興味ないんだ。十年後も僕のことを好きならその時はまた告白しに来なよ。いい返事できるって保証はないけどね」

 永田先生の言葉を受け止めた女子生徒達はみんな取り乱し、わんわんと泣き出す子まで出てきた。

「永田先生、ひどい!そんな言い方ってないです!」
「ショック……。もっと優しい先生かと思ってた……」
「私達、もう子供なんかじゃありません!」

 それぞれに抗議する女子生徒達に向け、永田先生は追撃と言わんばかりに告げた。

「恋敵をいじめる時点で子供でしょ。本当にいい女はそんなことしないんだよ。分かったら僕のことは諦めな」

 あれだけざわついた教室内はしんと静まり、呼吸するのすらためらわれる空気になった。永田先生の迫力に、生徒全員飲み込まれてしまっている。

「それじゃあ、大城先生は授業を続けて下さい。受験は刻一刻と迫ってるんだから、みんな真面目に授業受けるんだぞ〜。次こんなことしたら内申書どうなるか分からないからなー?」

 最後、天使のような微笑みでサラッと脅しをかけ、永田先生は教室を出て行った。永田先生らしいような、らしくないような……。

 永田先生の言葉が毒にも薬にもなったのか、その後女子生徒達は大人しくなり、他の生徒達と共に授業を受けてくれた。


「永田先生、さきほどはありがとうございました!」

 昼休み、職員室で昼食を摂る永田先生に私はお茶を淹れ、さきほどの礼をした。

「これ、購買で買ったものでなんですが、お礼の気持ちです」
「チョコブラウニー?ありがとう。これ、濃厚でおいしいよね。女の子らしい差し入れだ」
「……助けていただいたことは本当に感謝しています。でも、あんなことを言ったら、永田先生のお立場が悪くなるんじゃないかと心配です」

 案の定、その日の放課後、一部の保護者から抗議の連絡があり、永田先生は校長室でたっぷりしぼられることとなった。

 それだけでなく、女子生徒の永田先生への好感度は急降下。学校のアイドル的存在として注目されていた永田先生のその発言はまたたく間に全校生徒が知ることとなってしまった。
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